真鶴本小松石について

 

箱根火山の恩恵ー小松石

 

 真鶴の山側で採掘される石は「本小松石」と呼ばれ、庵治石(香川県)・稲田石(茨城県に並ぶ日本三大名石のひとつとされている。光沢が美しく品があり、わび、さびを感じさせる日本の名石。大正・昭和天皇御陵、永井荷風、志賀直哉、美空ひばり、古くは源頼朝や北条一族など多くの著名人の墓石としても用いられている最高級品だ。岐阜県の寺で1200年前の小松石のはかいしが発見されていることから、奈良時代には石材採掘が行われ、遠方への輸送を行っていたことがわかる。

 

 真鶴の石材業が本格的に発展していったのは、北条氏が保護奨励し、小田原城の築城と補修、鎌倉の鶴岡八幡宮の大改築、小田原府内の水道工事、石垣山一夜城建城など大規模な事業に小松石が使われている。真鶴港から海路にて全国に運ぶことができたのも、真鶴の石材業が発展していった大きな理由のひとつ。江戸城の石垣も、この本小松石によって作られたものだ。

 

受け継がれていく誇り

 

 真鶴を訪れたら、ぜひ採石場に足を運んで欲しい(採石場見学は要問合せ※)。山道を進んでいくと突如現れる石壁に思わず息をのむ。場所によって石の質が異なるので、良質の石を掘り出すまでにかなりの時間がかかる。茶褐色の石を、八段階に分けて丁寧に磨き上げると灰緑色の品のいい光沢が現れてくる。加工場には粉塵が飛び、石を削る音が耳に響く。「磨くときには水を使うので冬は寒さがこたえる。足腰に負担もかかるし、石の仕事は結構辛い。それでもやめないで続けているのは、真鶴と小松石を愛し、歴史ある石材業に誇りを持っているから」。そう語るのは石材業を営む、前神奈川県石材協同組合理事長の竹林勇さん。竹林さんの下には、全国各地から墓石建造の依頼が舞い込んでくる。デザインも担当し、依頼主の希望にあった墓石を作り上げる。勇さんの姿を小さい頃から見続けている息子さんも、石材業の道を選んだ。日本の伝統産業が次の世代へ受け継がれていく。

 

※問い合わせ

 

神奈川県石材協同組合 TEL0465-68-0019 更新 令和3年2月17